高性能な作業環境を求めるなら、ワークステーションの導入が選択肢に入ります。処理能力が高く、CADや動画編集などの重い作業にも対応できるのが特徴です。一方で、価格帯やスペックの幅が広いため、用途に合った選び方が重要です。本記事では、2025年に注目されているワークステーションを5つご紹介します。
業務効率を高めたい方や、作業内容に応じて機種を選びたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ワークステーションとは?パソコンとの違いを解説
ワークステーションとは、高性能なパーツを搭載した専門用途向けのパソコンです。AIの学習処理、3DCGの制作、解析業務など、処理負荷の大きい作業を想定して設計されています。
一般的なパソコンとは異なり、ハイスペックなCPUやGPU、拡張性に優れた筐体、高速なメモリなどを搭載しており、長時間の連続稼働にも対応します。
科学技術分野や映像制作、設計開発の現場などで利用されることが多く、使用目的によってはカスタマイズモデルが選ばれることもあります。
ワークステーションの選び方
CPU
CPUは、ワークステーションの処理性能を左右する中核的なパーツです。Intel XeonやAMD Ryzen Threadripper PROといった、マルチコア・マルチスレッド対応のプロセッサが主に採用されます。これらはサーバーグレードのアーキテクチャを基盤とし、高い安定性と長時間の連続稼働に耐える設計が特徴です。
物理演算、3DCGレンダリング、CAE(構造解析)、ディープラーニング前処理といったマルチスレッド負荷の高い作業では、24コア48スレッド以上のCPUが真価を発揮します。例として、Xeon W-3400シリーズやThreadripper PRO 7995WX(96コア192スレッド)などは、同時並行での複数タスク処理に強く、高い処理性能を持ちます。
また、L3キャッシュ容量もパフォーマンスに大きく影響します。大規模なデータ処理や仮想環境では、128MB〜256MBのキャッシュが効果を発揮するケースもあります。対応するDDR5 ECCメモリや8チャネルメモリ構成など、CPUとマザーボードの対応関係も確認が必要です。
加えて、PCIeレーン数の多さも見逃せません。GPUやNVMe SSDを複数搭載する構成では、PCIe 5.0に対応したCPUプラットフォームを選ぶことで、帯域幅のボトルネックを防ぐことができます。
GPU
ワークステーション向けGPUには、NVIDIAのQuadroシリーズ(現:RTX Aシリーズ)が広く採用されています。Quadroはコンシューマー向けのGeForceと異なり、OpenGLやDirectX、Vulkan、CUDA、OptiXなどの業務用APIとの互換性や安定性が重視されており、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)認証によって、AutoCADやSolidWorks、Maya、DaVinci Resolveなどとの動作保証もされています。
3DCADやCGレンダリングでは、エラー耐性・浮動小数点演算の精度が求められるため、GeForceよりもQuadroが適しています。ディープラーニングやAI開発では、Tensor CoreやCUDA Core数、VRAM容量が処理速度に直結します。たとえば、RTX A6000は48GBのGDDR6 ECCメモリを搭載しており、大規模な学習モデルにも対応可能です。
Quadroはパッシブ冷却対応のデータセンター仕様モデルや、SFF(小型フォームファクタ)対応モデルも存在し、筐体サイズや冷却方式に応じて選択肢が広がります。また、NVLinkによる複数GPU構成も可能で、分散処理やVR対応など拡張性も高いのが特徴です。
メモリ
ワークステーションにおけるメモリは、安定性と容量の両立が求められるため、ECC(Error-Correcting Code)対応かつレジスタードメモリ(RDIMM)が理想的です。特に64GB以上の構成を目指す場合、一般的なアンバッファードメモリでは信頼性が不足することがあります。RDIMMやLRDIMMを選ぶことで、メモリバスへの負荷を抑えつつ、大容量構成にも対応できます。
容量の目安としては、3DCG制作やCADでは32GB〜64GB、ディープラーニングやシミュレーション用途では128GB〜512GB以上も視野に入ります。メモリチャンネル数を活かすためには、クアッドチャネルやヘキサチャネル構成に対応したマザーボードを選び、スロットをバランスよく埋めることも重要です。
また、メモリクロックやレイテンシもパフォーマンスに影響するため、CPUのメモリコントローラとの互換性も確認しておくと安心です。
ストレージ
ストレージは、作業効率や信頼性に大きく関わるため、用途に応じて複数のドライブを組み合わせる構成が一般的です。システムドライブには、読み書き速度に優れたNVMe SSDが推奨されます。OSや主要アプリケーションはここにインストールし、起動や処理の高速化を図ります。
一方で、プロジェクトデータや素材ファイルなどの保存には、容量重視の3.5インチHDDを追加で搭載することが多く、10TB以上のモデルを複数使用するケースもあります。さらに、信頼性を高めるためにRAID構成を導入することもあります。RAID 1やRAID 10はミラーリングによる冗長性を確保でき、RAID 5やRAID 6はパリティによって障害に強い設計が可能です。
高負荷な書き込みが発生する環境では、耐久性の高いエンタープライズ向けSSDをデータキャッシュ用に利用することもあります。必要に応じてホットスワップ対応ベイを搭載し、ディスクの入れ替えや拡張がしやすい構成をとることも検討されます。
そのほか、冷却性能や電源ユニットの容量・信頼性、拡張スロットの数もチェックポイントです。用途に応じてPCIeスロットやM.2スロットが足りるかを確認しましょう。
ワークステーションおすすめ
マウスコンピューター DAIV クリエイター向けワークステーション / Xeon / RTX A400
マウスコンピューター DAIV クリエイター向けワークステーションです。OSはWindows 11 Pro for Workstations 64ビットを搭載しています。
CPUは、インテル® Xeon® w3-2423 プロセッサー、グラフィックボードはNVIDIA RTX™ A400。メモリは64GB (16GB×4 / クアッドチャネル)で、ストレージはM.2 SSD1TB (NVMe Gen4)を搭載しています。
エントリー向けワークステーションですが、768基の CUDAコアと、第3世代のTensor コアを搭載しています。
マウスコンピューター DAIV 3Dモデリング向けワークステーション / Ryzen Threadripper PRO / RTX 6000 Ada
マウスコンピューター DAIV 3Dモデリング向けワークステーションとして使える、ハイスペックなモデルです。
CPUはAMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 7995WX プロセッサ(最大5.10GHz)、メモリが64GB DDR5-4800 Registered ECC、ストレージはM.2 SSD 4TB (NVMe Gen4×4 / Western Digital WD_BLACK SN850X)です。
グラフィックボードはNVIDIA RTX™ 6000 Ada 世代を搭載しています。第4世代 Tensor コアでNVIDIA Deep Learning Super Sampling 3.0 (DLSS 3)に対応しています。
HP Z8 G5 Workstation / Xeon® Silver 4510 / RTX A400
HP Z8 G5 Workstationは、デュアルソケット設計によりCPUのパフォーマンスが高いモデルで、レンダリングが速くなっています。
構成が複数あり、フルカスタマイズモデルの場合にはCPUがIntel® Xeon® Silver 4510 プロセッサー (2.4GHz 最大4.1GHz / 12コア / 30MB / 4400MHz)、メモリが16GB DDR5 SDRAM(4800MHz / ECC / Registered / 16GBx1)、ストレージは512GB HP Z Turboドライブ G2 (内蔵M.2スロット接続 TLC NVMe SSD) です。NVIDIA RTX A400 4GBのグラフィックボードを搭載しています。
拡張スロットとしてPCIeスロットを7つ、2つのフロントNVMeベイがあります。また、M.2ドライブや3.5インチSATAを追加できる設計になっています。
Lenovo ThinkStation P5 / RTX A1000
Lenovoのワークステーションで、ThinkStation P5です。3Dレンダリングで使いたい人にぴったり。
スペックはCPUがIntel® Xeon® w3-2423 プロセッサー (2.10 GHz 最大 4.20 GHz)、メモリが16 GB DDR5-4800MT/s (RDIMM, ECC)、ストレージは512 GB SSD M.2 2280 PCIe-NVMe Gen4 Performance TLC OPAL対応です。ストレージはNVIDIA RTX™ A1000 8GB GDDR6を搭載しています。
冷却システムにより安定稼働、耐久性のある仕様になっています。
DELL Precision 3680 タワー型 ワークステーション
DELLのデスクトップワークステーションPrecision 3680です。エントリー向けでCore iシリーズを搭載しています。
スペックの構成が多く、予算に合わせて選べるのが魅力です。CPUはIntel Core™ i5 14600・ i7 14700・i9 14900が選択可能です。メモリは8GB~16GB DDR5、ストレージは256GB~1TB SSDです。
グラフィックボードが搭載されていない構成もあるので注意です。NVIDIA® T400やRTX™ A1000が選べます。
セキュリティはTPM 2.0やシャーシ侵入検出、自己暗号化ストレージに対応。筐体は高負荷のときに熱を管理して、静音性も高くなっています。
まとめ
ワークステーション選びでは、用途に応じたスペックの見極めが重要です。CPUはマルチコア・マルチスレッド性能が高いIntel XeonやAMD Ryzen Threadripper PROが中心となり、計算負荷の高い処理を支えます。GPUはNVIDIA Quadroシリーズ(RTX Aシリーズ)が業務用に最適化されており、安定した性能を発揮します。
メモリはECC対応かつレジスタードメモリを選び、大容量かつ安定した動作を確保しましょう。ストレージはNVMe SSDによる高速なOS・アプリ環境と、RAID構成可能な大容量HDDの組み合わせが基本です。冷却や電源、拡張性も考慮し、作業環境に最適な構成を検討してください。
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